介護施設(老健・特養)への看護師転職。仕事内容・給料・人員配置基準を解説

「病棟のような急変対応の連続から離れたい」「夜勤を減らしたい」といった理由から、介護施設への転職を考える看護師は少なくありません。介護施設と一口に言っても、介護老人保健施設(老健)、特別養護老人ホーム(特養)など制度上の目的が異なる施設があり、看護師の役割や配置人数も変わってきます。この記事では、老健・特養の制度上の違い、人員配置基準、仕事内容、給料相場、転職時に確認しておきたいポイントを一次情報とあわせて整理します。

介護施設で働く看護師が増えている背景
厚生労働省「2040年に向けた看護職員の養成・確保の在り方に関する検討会」(2026年4月10日開催、資料3「看護を取り巻く現状について」)によると、介護保険施設等で就業する看護職員数は2002年の約6.8万人から2023年には約16.8万人へと、約2.5倍に増加しています。病院の看護職員数の伸びが緩やかになる一方で、介護保険施設等での就業者数は伸び続けており、高齢化の進行に伴って介護施設が看護師の主要な活躍の場の一つになっていることがうかがえます。
老健と特養の違い。制度上の目的・入所期間
介護施設はいくつかの種類に分かれますが、看護師の転職先として代表的なのが介護老人保健施設(老健)と介護老人福祉施設、いわゆる特別養護老人ホーム(特養)です。両者は根拠となる厚生省令(いずれも平成11年3月31日公布)が別であり、制度上の目的も異なります。
| 介護老人保健施設(老健) | 介護老人福祉施設(特養) | |
|---|---|---|
| 制度上の位置づけ | 在宅復帰を目指すリハビリ中心の「中間施設」 | 日常生活の介護を中心とした生活施設 |
| 主な利用者 | リハビリを経て在宅復帰を目指す要介護者 | 要介護度が高く、長期の入所が想定される高齢者 |
| 看護師の主な役割 | バイタルサイン等の健康管理、体調変化時の医師への報告、リハビリとの連携 | 日常的な健康管理に加え、看取りや急変時対応の比重が相対的に大きい施設もある |
| 根拠法令 | 介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準(平成11年厚生省令第40号) | 指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第39号) |
老健は在宅復帰を前提とした中間施設という位置づけのため、リハビリスタッフとの連携や、在宅復帰に向けた健康状態の評価が業務の軸になりやすい一方、特養は生活の場としての性格が強く、施設によっては看取りや急変時対応への関与が大きくなる場合があります。配属される施設の利用者層・運営方針によって業務の重心は変わるため、求人票や施設見学で実際の役割を確認することが大切です。
人員配置基準。看護師は何人配置されるのか
介護施設は病棟に比べて看護師の配置人数が少ないのが特徴です。厚生労働省令に定められた配置基準は次のとおりです。
| 施設 | 看護・介護職員の配置基準 | 看護職員の内訳 |
|---|---|---|
| 老健 | 常勤換算で、入所者数が3又はその端数を増すごとに1以上 | 看護職員は看護・介護職員総数の7分の2程度、介護職員は7分の5程度が標準 |
| 特養 | 常勤換算で、入所者数が3又はその端数を増すごとに1以上(看護・介護職員の総数) | 入所者30人以下は1以上、30人超50人以下は2以上、50人超130人以下は3以上(130人超は50人増すごとに1加算)。うち1人以上は常勤が必要 |
いずれの施設も、看護師1人あたりが担当する利用者数は病棟に比べて多く、日中であっても看護師が1人〜数人体制で勤務にあたることが一般的です。配置人数が少ない分、1人で判断・対応する場面が増えるため、一定の臨床経験を求める求人が多い点にも注意が必要です。
仕事内容
介護施設での看護師の主な業務は、次のように整理できます。
| 業務 | 内容 |
|---|---|
| 健康管理 | 定期的なバイタルサインの確認、服薬管理、健康状態の記録 |
| 医療的処置 | 褥瘡(床ずれ)の処置、喀痰吸引、経管栄養等の管理(施設の医療体制による) |
| 急変時対応 | 体調の急変時に一次対応を行い、必要に応じて提携医療機関・配置医師へ連絡 |
| 多職種連携 | 介護職員・配置医師・リハビリスタッフ・ケアマネジャーとの情報共有 |
| オンコール対応 | 夜間は介護職員のみで、看護師はオンコール待機となる施設が多い |
病棟のような急性期対応は基本的にありませんが、夜間に看護師が常駐せずオンコール待機となる施設も多く、電話での判断や緊急時の対応力が求められます。求人票では日勤のみか、オンコール当番があるかを必ず確認しましょう。
給料相場
厚生労働省老健局老人保健課「令和5年度介護事業経営実態調査結果」によると、常勤看護師1人当たりの平均給与額(月額)は、介護老人保健施設で約46万2,955円、介護老人福祉施設(特養)で約47万2,789円となっています。看護師全体の給料水準としては、厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」による看護師の平均年収は約519万7,000円(平均年齢41.2歳、平均勤続年数9.4年)です。看護師の給料相場全般については気になる看護師の平均年収大公開!あなたは平均より安いかももあわせてご覧ください。
給与額には地域・施設の運営法人・夜勤やオンコール手当の有無による差があるため、応募先の求人ごとに手当の内訳まで確認することをおすすめします。
転職で確認しておきたいポイント
オンコール体制・急変時の対応フローを確認する
夜間に看護師が施設にいない場合、オンコール対応が発生します。オンコールの頻度、提携医療機関への搬送基準、配置医師への連絡体制がどう整備されているかは、入職後の負担に直結するため、面接・施設見学で具体的に確認しましょう。
配置人数が少ない分、裁量と責任が大きくなる
病棟に比べて看護師の人数が少ないため、1人で判断を求められる場面が増えます。臨床経験、特に急変対応の経験があると評価されやすい一方、相談できる同僚が少ない環境でのやりがいと負担の両方を踏まえて検討することが大切です。
求人数は病院と比べて限られるため、複数の情報源で探す
看護職全体で見ると、2024年度の有効求人倍率は2.51倍と10年ぶりの高水準にありますが、介護施設の求人は病院・訪問看護等と比べて施設数・募集枠が限られる傾向があります。詳しいデータは看護師の有効求人倍率は2.51倍。データで読み解く「今が売り手市場」の理由で解説しています。複数の転職エージェント・求人サイトに登録し、希望条件に合う求人を見逃さないようにしましょう。
ケアマネジャー資格との兼務求人もある
介護施設の求人では、看護師免許に加えてケアマネジャー(介護支援専門員)資格を持つ人材を、施設看護師とケアマネジャー業務の兼務で募集するケースもあります。資格取得や業務内容の違いについては看護師からケアマネージャー(介護支援専門員)への転職。仕事内容・給料・受験資格を解説で詳しく解説しています。
この記事の主な情報源
- 厚生労働省「2040年に向けた看護職員の養成・確保の在り方に関する検討会」資料3「看護を取り巻く現状について」(2026年4月10日)
- 介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準(平成11年3月31日厚生省令第40号)第2条
- 指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年3月31日厚生省令第39号)
- 厚生労働省老健局老人保健課「令和5年度介護事業経営実態調査結果」
- 厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」
制度・給与水準は今後変わる可能性があるため、最新の情報は厚生労働省・各転職サイトの公式ページもあわせてご確認ください。
よくある質問
Q. 老健と特養、どちらが看護師として働きやすいですか?
どちらが働きやすいかは一概には言えません。老健は在宅復帰を目指す利用者が中心でリハビリとの連携が多く、入所期間が比較的短い傾向があります。特養は長期入所が前提で、施設によっては看取りや急変時対応の比重が大きくなります。求人票だけでは分かりにくい部分も多いため、施設見学で実際の利用者層・業務の重心を確認することをおすすめします。
Q. 介護施設の看護師はオンコール対応が必須ですか?
施設によって異なります。多くの介護施設では夜間に看護師が常駐せず、看護師はオンコール待機、夜間の現場対応は介護職員が担う体制が一般的です。ただし24時間看護師が常駐する施設や、オンコールの頻度が少ない施設もあるため、求人ごとに体制を確認しましょう。
Q. 介護施設への転職に必要な資格はありますか?
介護施設の看護師として働くために看護師免許以外の資格は必須ではありません。ただし、求人によってはケアマネジャー資格等を歓迎条件とする場合や、兼務を前提とした募集もあります。応募前に求人票の資格要件・業務内容を確認しましょう。
まとめ
介護保険施設等で働く看護職員数は2002年から2023年で約2.5倍に増加し、介護施設は看護師の活躍の場として存在感を増しています。老健と特養では制度上の目的や入所期間が異なり、看護師の役割の重心も変わります。配置基準上、病棟より少人数での勤務となるため、オンコール体制や急変時対応のフローを事前に確認し、裁量と責任の大きさを理解したうえで転職を検討することが大切です。給料・待遇は施設ごとの差が大きいため、複数の情報源で求人を比較しながら進めましょう。


