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看護師の業務は、保険師助産師看護師法に定められており、大きく分けて2つあります。
何の制限もなく行うことができる「療養上の世話」と、制限が加わる「診療の補助」です。
看護師が行える医療行為にはどんな種類があるのか知っていますか。
何気なくやっている医療行為が実は医師の指示が必要であったり、医師しか行えない医療行為があったりします。
実際の現場では、看護師ができる医療行為と、医師しかできない医療行為の境目が曖昧となっています。
看護師がしてはいけない医療行為を行って、万が一ミスが起こったときは問題となります。医師しか対応出来ない医療行為には理由があります。
その行為自体が身体に危害を及ぼす可能性がある、またミスが起きた時に生命が危険な状態になる可能性があるからです。
患者さんのために、そして自分の看護師生命を守るためにも、看護師が対応できる医療行為と医師にしか対応出来ない医療行為を明確にする必要があります。
看護師が対応出来る医療行為と注意すべき点についてお伝えしたいと思います。
医療行為とは?
医療機関などで病気や怪我などの治療や診断、予防を行う行為のこと、医学的判断に基づいて行われる行為の総称です。
人体に危害を及ぼす、又は危害を及ぼす恐れのある行為に関しては医師の医学的判断や技術が必要となります。
医療行為の同義語として、「医行為」という言葉が使われる事があります。
看護師などが診療の補助として行う行為を相対的医行為、又は医療行為と呼んで、医師でなければ行うことが出来ない行為を絶対的医行為と呼ぶこともあります。
また、医療行為とみなされる条件は、下記3点です。
- 治療を目的としていること
- 承認された方法で行われていること
- 患者本人の承諾があること
例外として、輸血用の採血、意識不明などで患者自身から承諾が得られない時、緊急時の処置などがあります。
医療行為の種類
絶対的医行為
医師のみが行える医療行為のこと。行為、判断の難易度が著しく高く、高度に危険な行為のため、医師しか行えません。
例:手術の執刀、麻酔、処方、胸腔穿刺、気管挿管など
特定の医行為(特定行為)
・行為の侵襲性が相対的に高く、行為の難易度が高い医療行為のこと。
例:動脈ライン、気管挿管チューブの抜管、体表面の抜糸、褥瘡の壊死組織のデブリードマン
・行為を実施するタイミング等について判断の難易度が高い医療行為のこと。
例:脱水の判断と補正、術前の検査の実施や決定、がんによる苦痛緩和のための薬剤の選択と評価
上記2つに関しては、医師、認証を受けた看護師が行える医療行為になります。
認証を受けた看護師とは、高度な医療行為に携わることが出来る、高い能力と実務経験を持つ看護師のことをいいます。
「特定看護師」と呼称されています。特定看護師には資格はなく、「特定行為研修を修了した看護師」を略して「特定看護師」と呼ばれています。現在資格化の検討段階です。
一般医行為
行為の難易度、判断の難易度ともに看護師一般が実施可能なもの。医療機関で看護師が実施できる医療行為です。
例:酸素投与の開始、中止、投与量の調節、末梢血管静脈ルートの確保と薬剤投与、導尿・尿道カテーテル挿入など
医療行為は3種類あります。上記より、医師しか出来ない行為、医師又は特定看護師しか出来ない行為、看護師が出来る行為についてご理解頂けたでしょうか。
医師の指示と医療行為の実施について
看護師が出来る医療行為(特定行為、一般医行為)は、行為ごとに難易度が異なり、同じ行為であっても患者の病状や状態によっても難易度が異なります。
そのため、看護師が医療行為を行う場合、医師は患者の病態、看護師の能力、患者の状況等を踏まえ、看護師に指示する内容を判断しなければなりません。
看護師が医師の指示のもと診療の補助を実施するにあたり、指示が成立する条件としては以下があります。
- 対応可能な患者の範囲が明確にされていること
- 対応可能な病態の変化が明確にされていること
- 指示を受ける看護師が理解し得る程度の指示内容(判断の規準、処置・検査・薬剤の使用の内容等)が示されていること
- 対応可能な範囲を逸脱した場合に、早急に医師に連絡を取り、その指示が受けられる体制が整えられていること
一般行為だからといって、医師の指示なしに勝手に医療行為を行うことは出来ません。必ず医師の指示があり、対応困難な状態になった場合には医師への報告が必要となります。
看護師で行われている医療行為の例
- 酸素投与の開始、中止、流量の調整の判断
- 末梢血管静脈ルートの確保と薬剤投与
- 創傷被覆材の選択、使用
- 経管栄養用の胃管の挿入、管理
- 心肺停止患者への胸骨圧迫、AEDの使用
- 患者の内服薬管理
- 発熱時、疼痛時などに複数の薬剤から指示に基づき投与
- 尿量、血圧に応じて輸液の流量変更
- 尿道カテーテル留置、導尿の実施
医療行為を行う際の注意すべき点
①医師の指示があるのか
看護師の業務はあくまで、医師の診療の補助です。医療行為を行う時は、医師の指示あがるのかを必ず確認しましょう。
②職場によって対応出来る医療行為が異なってくる
A病院では看護師が末梢血管静脈ルートの確保ができたけど、B病院では医師しか行えない、患者の状態によっては、医師の判断なしに療養上の世話を行えないことがあります。職場、部署によって看護師に求められる能力も異なります。その場、その状況に応じて対応する力が必要となります。
まとめ
看護師が出来ない医療行為をして重篤な事故が起きた時に、患者さんに迷惑がかかるばかりではなく、看護師生命が絶たれる恐れもあります。
何気なくやっていた医療行為が、実は看護師がしてはいけない医療行為だったということがないよう、医師しか出来ない医療行為、看護師が出来る医療行為についてしっかり理解してもらいたいと思います。