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突然の胸痛、動悸。とりあえず12誘導心電図を取りますよね。ただ心電図を取って、あとは医者任せになっていませんか。
また、集中治療室や循環器病棟だけでなく、他の病棟でも重症患者さんには心電図モニターをつけることがあります。医者の指示があったからとりあえずつけている、心拍数、SpO2、血圧の数値だけの観察になっていませんか。
心電図波形の異常に早く気づける、胸痛出現時に、急いで報告すべき心電図波形なのかどうかの判断をしてから、医者に報告できる看護師になりたい。
でも、心電図は苦手、どうやって勉強したらいいのか分からないという看護師さんは多いと思います。そんな方へ、少しでも心電図が好きになってもらえるように、心電図を読めるようになるためにするべき事を記事にしてみました。
心電図は本当に奥が深く、人によって波形もそれぞれです。勉強しなければならないことはたくさんありますが、まずは正常な心電図波形を覚えて、その正常な心電図波形と比べて「何かおかしい。」と異常に気づけるようになることが大切です。
心電図に対する苦手意識を取り除きましょう。
心電図を読めるようになるためにすべき事を紹介します。
心電図モニターを適切に装着できるようになる
心電図とは心臓の電気的刺激を図に表したものです。心電図には、12誘導心電図とモニター心電図(3点もしくは5点)があります。
12誘導心電図
12誘導心電図とは、四肢誘導(四肢にひとつずつ装着した4つの電極)と、胸部誘導(胸部に装着した6つの電極)で12方向から電極の流れを測定します。
四肢誘導は右手に赤、左手に黄、左足に緑、右足に黒の電極を装着し、胸部誘導は赤(V1)、黄(V2)、緑(V3)、茶(V4)、黒(V5)、紫(V6)の順になるようには装着します。
胸部誘導の電極の装着位置は、まず第4肋間胸骨右緑に赤、第4肋間胸骨左緑に黄の電極を装着します。
その次に、第5肋間と左鎖骨中線の交点に茶、黄と茶の中点に緑、左前腋窩線上で茶と同じ高さに黒、左中腋窩線上で茶と同じ高さに紫となります。
必ず正しい位置に装着する必要があるので、頑張って覚えてくださいね。私は胸部誘導を張る順番を「せ・き・ぐ・ち・く・ん」と覚えました。
測定時は患者さんに横になってもらい、10~20秒程安静にしてもらいます。12誘導心電図は多方面から心臓の電気刺激を見るため、異常を把握するうえで必要です。虚血性変化の判定にとても優れています。
モニター心電図
胸部に3個(3点誘導)もしくは5個(5点誘導)の電極を装着して、心電図を測定します。
3点誘導の場合、右鎖骨下に赤、左鎖骨下に黄、左下胸部に緑を装着、5点誘導の場合、赤、黄、緑は3点誘導と同様、右下胸部に黒を装着します。
最後に白は胸部誘導部位に装着します。不整脈の観察が目的ならV1に、心筋虚血の判定が目的ならV5かV6に装着するのが適当です。
ベッドサイド、ナースステーションで常時観察できるため、異常の早期発見ができます。
しかし、異常の詳細はこのモニターでは分からないので、異常発見時は必ず12誘導心電図をとってください。
正常な心電図波形を理解する
正常な心電図はP波、QRS波、T波、U波の4つの波形で構成されます。
まず、P波という小さな波から始まり、次に尖ってP波より大きいQRS波、そしてなだらかでP波より少し大きいT波、最後に小さいU波があり、この4つの波が1回の心臓の収縮と拡張を表し、1拍となります。各波形の説明をしたいと思います。
- P波:心房の収縮。P波の幅は06~0.10秒が正常値。
- QRS波:心室の収縮。ヒス束から右脚、左脚へ刺激が伝達することで起こる波形です。QRS波の幅は06~0.10秒が正常値。
- T波:心室の拡張。心室が興奮からさめていく過程を表します。心室の充電期です。この過程を再分極といいます。T波の幅は10~0.25秒が正常値。
- U波:U波が発生する成因は不明ですが、再分極の終わりやプルキンエ繊維の興奮を表すのではないかと言われています。U波の幅は16~0.25秒が正常値。
- PQ時間:P波の終わりからQ波までの時間。洞結節から心房、心房結節を通って心室へ伝わるまでの時間を示します。正常値は12~0.20秒。
- QT時間:Q波の終わりからT波の開始までの時間。心室の興奮開始から興奮がすべて終わるまでの時間を示します。正常値は30~0.45秒。
正常洞調律
洞調律とは、洞結節からの刺激が心房、心室に伝わって、心臓が正常に動いている状態をいいます。
簡単に言えば異常がなく、元気な心臓です。心電図上、P波、QRS波、T波が正しく規則的に出現し、一定のリズムで繰り返されます。
正常洞調律波形のポイント
- P波がある。上向き波形で一定に出現する。
- リズムが一定で整
- QRS波は06~0.10秒間隔
- T波は上向き波形
- 心拍数は60~100回/分(成人)
心電図を読む時に注意する点
正常な心電図を理解したら、次は心電図波形の何を見て異常を発見するかを理解していきましょう。
リズムを見る
整脈なのか不整脈なのかを見ます。正常な心電図波形は、P波、QRS波、T波が一定のリズムで出現します。
このリズムが早くなったり、遅くなったりすることは異常です。
P波を見る
P波があるのか、ないのかを見ます。P波がないということは心房の収縮がない洞房ブロック、心房細動(VF)の可能性があります。
QRS波を見る
脚ブロック、心室頻拍(VT)、心室性期外収縮(PVC)などの不整脈はQRSの幅が広くなります。
心室内の伝道障害が原因のため、心室細動(VF)へ移行する可能性があります。
ST波を見る
QRS波の終わりからT波のはじまりまでの平坦な部分をSTと呼びます。
正常では基線と同じ高さなので、STが上昇、下降している場合心筋梗塞が疑われます。
生命に関わる危険な不整脈を覚える
不整脈の種類はたくさんあるので、まずは致死性不整脈を覚えましょう。
致死性不整脈とは長時間放置しておくと短時間で死亡する危険性の高い不整脈のことをいいます。早急な治療が必要です。
心室細動(VF)
心室が痙攣しているような状態で、心室の収縮がなく、血液が拍出されていない。とても危険な状態なので、すぐに心肺蘇生を開始して医師を呼ぶ必要があります。
持続性心室頻拍(VT)
心室期外収縮が引き金となって突然頻拍となります。血圧低下が起こりやすい。
房室ブロック
心房から心室に刺激が伝わらない、または刺激伝導が遅延する状態。房室ブロックには1度房室ブロック、モビッツ2型ブロック、ウェンケバッハ型房室ブロック、3度房室ブロックがあります。
3度房室ブロックのことを完全房室ブロックともいい、心停止の危険が高く、ペースメーカーの装着が必要となります。
洞不症候群(SSS)
洞機能が低下し、そこから発する興奮の頻度が緩徐で、不規則となっている状態。
P波、QRS波、T波は正常ですが、先行するP波を認めない。心臓から拍出される血液の量が低下するので、めまい、失神を引き起こすことがあります。ペースメーカーが必要となります。
まとめ
心電図を読めるようになるためにすべき事をまとめてみましたが、いかがでしたか。
心電図は確かに難しいです。しかし、集中治療室や循環器病棟だけではなく、どの病棟にも心電図モニターをつけてる患者さんはいます。
それだけ、大切であり、勉強する必要があるということです。患者さんを常に観察できるのは看護師だけです。
勉強し始めると楽しい心電図。心電図に対しての苦手意識を取り除いて、たくさんの心電図波形を見て、心電図を読める看護師になりましょう。