看護師は離職率が高いと言われていますが、本当でしょうか?140万人とも150万人ともいわれる、現在働いている看護師数。日本の人口が1億2,000万人ですから、少なくとも全人口の100人に1人は看護師!ということになります。
年間の離職率は約1割、つまり15万人という数字もあり、転職情報サイトや転職をバックアップするエージェントも全国にあります。それだけ辞める人が多いということは、逆に転職する人も多いという証拠。では、病院やクリニックを辞めてしまった理由は何か、ランキングで追ってみましょう。
年々仕事の量は増えている
ランキングの前に、現在の看護師の仕事について考えてみましょう。養成学校や短大、大学で学ぶ看護術や倫理といった伝統的なスキル。必死に知識と実践を積んで国家資格試験に合格しても、実際の現場では「パソコンの打ち込み」「上司との会話」「患者との接し方」「会議」「メモ」あるいは「飲み会」など、学校では全く習わなかったことが次々と出てきます。
世間では「残業を減らそう」としているのに対し、看護師の場合は働く時間が長く、体の疲れも溜まってしまいます。普通なら「徐々に体を慣らす」のが仕事ですが、医療現場では「看護師になったら、即戦力」とされます。
学生時代はこんな看護師になりたい…と夢を持っていても、入職すると「こんなはずじゃなかった…」と思う新人ナース。この初めの壁が離職という大きな”イベント”に発展しているのです。
では、ランキングを見ていきます。出展は「平成24年度都道府県ナースセンターによる看護職員の再就職実態調査(日本看護協会調べ)」です。
第1位 妊娠・出産
日本看護協会が調べた「看護職員実態調査」結果によると、20代女性看護師の未婚率は75%。つまり、4人に1人しか結婚していないことになります。これはほかの業界に比べて際立って高いと言われています。出会いの時間が少ない看護師が結婚し、妊娠・出産するときが「唯一休みが取れるとき」。離職の絶好のタイミングとなってしまうのです。
第2位、第3位 病気
驚くことに、看護師自身が病にかかってしまって離職している…という実態。実は「カラダの不調」(第2位)と「こころの不調」(第3位)の両方を足すと、第1位に踊り出るのはこの「病気」です。
腰を痛めてしまう、めまいがひどい、生理痛といった職業病。病院内の人間関係や患者からのパワハラ、医師や上司からのパワハラやセクハラといった問題で精神的に参ってしまう心の病。
これらはどうしても避けにくい状況にあるのが、今日の病院です。それに複雑化しているのが「大学」という問題。例えば東京の聖路加国際大学の看護学部ですが「6,617,400 円」と公式サイトで公表されています。国立と私立では差がありますが、数百万円の学費や諸経費を支払ってくれた親御さんや、借りた奨学金などもストレスとなって結果的に体を壊してしまった…という方も少なくないようです。
第4位 子育て
看護師という仕事柄か、子育てを大事にしようと考える人が多いことから「育児離職」が第4位に浮上。1人よりは2人、3人と子供を産み育てたいという看護師の方の場合は、離職して失業保険を受け取って育児期間が過ぎて職場を探す…といった「仕事探しのプロ」が多いようです。
第5位 残業の多さ
離職につながらないものの、一番の不満として挙げられるのが「残業の多さ」。看護師は言い換えれば「軍隊式」の職場でもあります。特に総合病院や大病院であればあるほどその傾向は強く、個人クリニックでも看護師が多ければ上下関係が仕事全面に出てきます。
病棟の看護師が夜勤明けなのに「申し送りが遅い」といった現状。各種の委員会や勉強会という「勤務外勤務」。あるいは飲み会も強制的となれば、立派な残業とも言えます。
クリニック勤めになると「掃除」「洗いもの」といった勤務時間前の勤務があったり、終末期医療の病院では患者や家族への対応で長々と勤務時間が増えるなど、問題は全国で発生しています。
第6位 インシデント
病院というところは、基本的に「上司が部下を褒める」ということをしません。当たり前のことを当たり前にするのが医療だから…というのが古くからの考え方だからです。
のびのび仕事をしたい…と思っても、インシデントになりそうで萎縮してしまう。責任感の強い方、性格の優しい方は特に大きなプレッシャーと闘わなければなりません。
大学病院の場合は看護師が看護師の仕事だけを全うできるのに対し、その他の総合病院。専門病院、クリニックなどの場合は看護師は完全にオーバーワークになっています。そのため「わからないこと」が毎日発生してしまう。誰も教えてくれない「わからないこと」を誰かが率先してやらなければならない。それが怖い、ということになります。
インシデントはチームとして動いていれば発生しないはずですが、誰もが無関心になってしまうと、起こってしまいます。
第7位 人間関係の悪さ
パワハラ、いじめ、嫌がらせ…様々な人間関係のねじれから発生する人間関係の悪さ。本来はあってはならないことも、医療機関という閉鎖された場所では「当たり前」になってしまうことから、離職の道を選ぶ方が少なくありません。
看護師の世界は女性が9割ですが、男性が少数いるだけで雰囲気が変わる…と言うのが多くの病院での実態。男性看護師が働いている病院への転職で落ち着いて働く…という選択肢もアリというわけです。
上位10位のうちいくつかをまとめると、この7つになります。もちろん「給与が低い」という不満で離職する方もいますが、実際にはどの病院もそれほどの違いはありません。それよりも、仕事に見合った待遇なのかどうか…それが大事な考え方となります。
看護師として人生を送る場合、ぜひ自分に正直に病院選び、クリニック選び、あるいはその他の医療機関での就職を果たしていくべきでしょう。尊敬される仕事の最も高いものは看護師です。ぜひ、自分に合った病院を見つけていきましょう!