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看護師は人の命を預かる仕事。決して、ミスがあってはいけません。
しかし、人間はミスをするものです。医療者なら誰もが「出来るだけインシデント、医療事故を防ぎたい」と考えていることでしょう。
特に新人看護師は判断能力がまだまだ未熟で、業務にも慣れていないため、ミスを起こしやすいです。
インシデントを出来るだけ起こさないように、臨床現場で実際に新人看護師が起こしやすいインシデント事例とその対策を紹介したいと思います。
患者間違い
事例1
受け持ち患者さんの中に同性の患者さんが2人おり、内服薬を間違えて配薬してしまった。
内服薬は一包化されていたため、まとめて病室に持って行き、同性の患者の内服薬を間違えて配薬してしまった。
患者さんは意識が清明の方だったため、内服前に名前が違う事に気付き看護師へ指摘があったため、誤薬を防げた。
事例2
患者の採血スピッツを間違えて提出してしまった。
早朝に受け持ち患者15人の採血摂取が必要であり、採血スピッツを患者毎に輪ゴムでとめ、一つのトレーにまとめて入れ、病室へ採血をしに回った。
スピッツの患者の名前を確認したが、患者には名前を名乗ってもらわず、採血を実施し、検査課へ提出。
検査データが以前のデータと大きな差があったため、患者誤認だと分かった。
原因と対策
患者誤認は新人看護師だけでなく、ベテラン看護師でもしてしまうインシデントです。
確認を怠ったり、注意力が低下している時は特に注意です。
上記2例とも、確認不足により発生したインシデントです。確認の徹底が必要とされます。
患者さんの名前の確認は基本中の基本です。配薬、点滴施行時、また何か処置を行う時は、必ず声出し、指差し確認、そして患者さんにも名前を名乗ってもらうことでインシデントを防ぐことができます。
また、事例1、2どちらも時間短縮のために、受け持ち患者さんの内服、採血スピッツを一つにまとめて訪床しています。
複数の患者の薬、物品を一緒にすることはインシデントのもとです。
しかし、1患者の処置が終わる毎にナースステーションへ物品を取りに戻っていては、時間がかかってしまいます。
薬剤、採血スピッツなどをまとめて持っていく時は、1患者1トレーを徹底し、また大きなワゴンに乗せて、乱雑に入り交じらないように保管し、持ち運ぶなど工夫が必要です。
転倒・転落
事例3
夜勤中、受け持ち患者さんがベッドから転落した。
入院初日の認知症の患者さん。日中は穏やかに過ごされていたが、夕方頃より「家に帰りたい」という発言があり、落ち着かない様子だった。
消灯後、病室から物音がしたため訪室すると患者がベッドサイドで倒れているのを発見。
ベッド柵は外されており、転落したと考えられる。
事例4
脳梗塞後で片麻痺の患者が、ベッドから車椅子へ移乗時に転倒。
移乗に介助が必要であり、患者さんを支えベッドから車椅子へ移乗した時に、身体のバランスを崩してしまい、患者さんと一緒に転倒してしまった。
原因と対策
転倒転落は本当に多いインシデントです。特に消灯後は暗くなり足下が見えにくくなるし、寝ぼけていて転倒転落したというケースがよくあります。
また、事例3のように、認知症の患者さんが夜間に落ち着かなくなったり、興奮しだしたりというケースもよくあります。
環境の変化に適応する力が落ちている高齢者が入院初日に不穏状態になることは多々見られます。
事例3の場合、「家に帰りたい」という発言や、落ち着かない様子があったため、不穏になる兆候はでていました。
頻回に訪室したり、離床センサーを設置したりなどの対策を事前にしていれば転落のインシデントは発生しなかったと考えられます。
患者さんの言動をよく観察することが大切です。
事例4は片麻痺の患者さんの移乗方法を正しく理解すること、そして無理に1人で移乗介助せず助けを呼ぶことが必要です。
新人看護師さんは忙しそうにしている先輩看護師に声をかけられず、つい1人で何でもしてしまう傾向にあります。
先輩に嫌な顔をされるかもしれませんが、患者さんに迷惑をかけるより数倍マシです。
勇気を出して先輩看護師に助けを求めてください。
食事時のインシデント
事例5
検査のため、延食の患者の食事を配膳してしまった。
受け持ち患者さんが昼食後に腹部造影CTの検査オーダーがあり、延食の必要があったがチームメンバーに伝え忘れていた。
他看護師が昼食を配膳してしまい、訪室した時には患者は食事摂取をした後だった。
事例6
そばアレルギーがある患者の食事にそばが出てきた。
食事は配膳時に、患者本人よりアレルギーがあると看護師へ指摘があった。
食事アレルギーの有無の情報収集ができていなかった。
原因と対策
事例5はチーム内でのコミュニケーション不足により発生したインシデントです。
申し送りや、打ち合わせ時にチーム全体で共有すべき情報は忘れずに伝えるようにしましょう。
もし伝え忘れてしまった場合は、リーダー看護師には必ず伝え、全体に情報を広めてもらうようにしましょう。
病棟全体でも食事延食患者の名前をボードに書いたり、配膳車に名前を明示したりと誰が見ても延食患者が分かるようにする工夫が必要です。
事例6は入院時の情報収集不足により発生したインシデントです。
アレルギーの有無を聞くのは基本です。もしアレルギーのある薬を使用したり、食事をしてしまうとアナフィラキシーショックを起こす可能性があり、とても危険です。
アナムネ用の用紙はどこの病院でも使用していると思うので、記入漏れがないよう注意しましょう。
意識清明でない患者さんの場合は患者家族にも協力してもらいましょう。
最初の情報収集はとても大事です。
まとめ
新人看護師が起こしやすいインシデントを事例とともにご紹介いたしました。
インシデントは、確認不足、コミュニケーション不足が原因で発生する事がよくあります。
インシデントを防ぐために、声出し、指差し確認、先輩看護師への報告、相談を徹底しましょう。
また、自身の医療、看護についての知識、技術を高めることも、新人看護師にとっては必要な事です。
医療行為や薬の知識があれば、その患者に必要な行為、薬なのかを判断することができます。
もし間違いがあった場合、医療行為を行う前に気付けます。
冒頭でも書きましたが、人間はミスをします。更に経験の浅い新人看護師さんはミスをする確率が先輩看護師に比べて高いです。
インシデントが起こるのは仕方がありません。
インシデントを起こした時に落ち込むのではなく、なぜそのインシデントが起きてしまったのかの振り返りが大切です。
同じインシデントを繰り返さないよう、対策をしっかり考えましょう。
そして、インシデントを起こした際は、必ず師長、先輩看護師に報告しましょう。
インシデントについてチーム全体で話し合う事はとても大切なことです。
自分では見つけられなかった解決策や防止策が見つかるかもしれません。ベテランナースでもインシデントは起こします。
新人看護師さん、インシデントを起こしても落ち込まず、そしてミスをするかもしれない、と怯えながら看護をしないでほしいと思います。
ミスを認め、振り返り、対策を考えられる素敵な看護師になってください。