一般病棟で働く限り、点滴の滴下速度の計算は避けては通れません。
看護学生時代から苦手だったという看護師さん、多いのではないでしょうか。私もその中の一人でした。
点滴の滴下速度の指示は、「抗生剤を100ml/H」、「○○輸液500mlを1日2本」、「○○輸液500mlを3時間」などと書かれています。1時間で点滴を終わらせればいい、1日2本投与すればいいということは、指示を見れば簡単に分かります。
しかし、不親切なことに実際に輸液セットを使って、何秒間に何滴落とせば指示通りに点滴を投与できるのかまでは、指示書には書いていません。
なので、滴下速度の計算は看護師がしなければなりません。指示通り安全に点滴を滴下することは看護師にとって必要な看護技術です。
点滴の滴下計算方法を紹介したいと思います。
輸液セットの種類を理解しましょう
ほとんどの病院、病棟には輸液セットは2種類あります。輸液セットを間違えるとせっかく計算しても、投与する滴下量が全く異なるので間違えないよう注意してください。輸液セットの種類は以下の通りです。
・成人用輸液セット:水色の袋に入っており、20滴/mlと表示されています。
1mlの輸液を落とすのに20滴必要ということです。
・小児用輪液セット:ピンク色の袋に入っており、60滴/mlと表示されています。
1mlの輸液を落とすのに60滴必要ということです。
輪液セットの色は全国統一の規格なので、色も合わせて覚えておくと緊急時に役に立つと思います。
成人には成人用の、小児には小児用の輸液セットを使用しましょう。
特に身体の小さい小児に成人用の輸液セットを使用してしまうと、薬剤の過剰投与となってしまうのでとても危険です。
必ず表記を確認してから使用するように心がけましょう。
滴下数の計算方法を理解しましょう
滴下数の計算式は以下です。
1分あたりの滴下数=(指示輪液総量)÷(指示輪液時間〔分〕)×(輪液セットmlあたりの滴下数)
ここでポイントとなるのは、指示輪液時間は時間(Hr)で指示されることが多いので、単位を「時間」から「分」に変更する必要があります。時間数に60をかけるだけです。
では、実際に計算してみましょう。
例1)小児の患者。500mlの点滴を12時間かけて投与。
小児の患者なので、小児用の輸液セット(60滴/ml)を使用します。
まず、「時間」を「分」に変更しましょう。
12時間×60=720分
では、上記の計算式に当てはめていきましょう。
500ml÷720分×60滴/ml=41.6滴/ml
1分間あたりの滴下数は42滴となります。
例2)成人の患者。500mlの点滴を8時間かけて投与。
成人の患者なので、成人用の輸液セット(20滴/ml)を使用します。
8時間×60=480分
500ml÷480分×20滴/ml=20.8滴/ml
1分間あたりの滴下数は21滴となります。
いかがでしたか。計算できましたか。しかし、1分間あたりの滴下数が分かっても、これでは点滴の滴下速度を調整することはできません。
1分間ずっと点滴の滴下をみて調整するわけにはいきません。時間がもったいないですね。
滴下速度を調整しやすいように、1秒間、もしくは10秒間の滴下数の計算が必要です。
では、まず1秒あたりの滴下数の計算をしていきましょう。1秒あたりの滴下数の計算は簡単です。
1分あたりの滴下数を「60」で割るだけです。引き続き上記の例を使って、練習していきましょう。
例1)42滴/分÷60=0.7滴/秒
例2)21滴/分÷60=0.3滴/秒
しかし、このままでは滴下数の調整が難しいので、10秒間に何滴落とせばよいのか計算が必要となります。
上記の1秒間の滴下数に10をかけます。
例1)0.7滴/秒×10=7滴
例2)0.3滴/秒×10=3滴
例1の10秒間の滴下数は7滴、例2の10秒間の滴下数は3滴ということになります。
これが基本的な輸液の滴下速度の計算方法です。しかし、10秒間の滴下速度をより簡単に求める方法があるので、紹介したいと思います。
10秒間の滴下数の計算方法
①1時間に何ml輸液するか計算します。輸液総量ml÷指示輸液時間(Hr)
②小児用ルートの場合「6」で、成人用ルートの場合「18」で割ると、10秒あたりの滴下数を求めることができます。では、再度上記の例を使って計算していきましょう。
例1)500ml÷12時間÷6=6.9滴/10秒
10秒間の滴下数は7滴となります。
例2)500ml÷8時間÷18=3.4滴/10秒
10秒間の滴下数は3滴となります。
この計算式方法の方がより簡単に、そして早く計算できます。
では、もう少し練習してみましょう。
練習問題
では、指示書から滴下数を計算する練習をしていきましょう。
①ビーフリード1000mlを24時間かけて投与。(成人患者)
1000ml÷24時間÷18=2.3滴/10秒
10秒間の滴下数は2滴
②1日、ソルデム3A500mlを4本投与(成人患者)
1日は24時間です。24時間で4本投与ということは、1本あたり6時間かけて投与します。
500ml÷6時間÷18=4.6滴/10秒
10秒間の滴下数は5滴
③抗生剤100mlを1時間で投与(小児患者)
100ml÷1時間÷6=16.6滴/10秒
10秒間の滴下数は17滴
④ビーフリード500mlを60ml/Hで投与(成人)
今までと異なる指示書の書き方です。
まず、1分あたりの滴下数を計算します。
成人用ルートは20滴/mlです。60mlを全部滴下すると60ml×20滴/ml=1200滴となります。1時間の滴下数は1200滴です。これを「60」で割ります。1200滴÷60=20滴/分
10秒間の滴下数は20滴
まとめ
点滴の滴下数の計算を紹介しましたが、いかがでしたか。輸液管理は治療のためにとても大切な看護技術です。
計算に慣れるまでは難しいかもしれませんが、何度も練習して頑張ってくださいね。