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公務員看護師として働きたい、という場合の選択肢の一つが「刑務所看護師」です。全国には刑務所と拘置所があり、「刑務所」「少年刑務所」「拘置所」「少年院」「少年鑑別所」「婦人補導院」が受刑者の暮らす場所となっています。
刑務所や拘置所で働く看護師とは、どういった待遇や仕事になるのか?じっくりとご紹介しましょう。
一般刑務所と医療刑務所とはどんなところか
刑務所は東京にも大阪にもありますが、多くは都市部から離れたところに立地しています。全国で89の刑事施設に医療室がありますが、全てが稼働しているわけではありません。その原因は医師不足によるものです。刑務所には「一般施設」と「医療重点施設」「医療専門施設」があり、昨今は高齢受刑者が急増していることから、医療重点施設が見直されている…と言われています。
医療専門施設は全国に4か所。東京八王子、愛知岡崎、大阪堺、北九州ですが、受刑者(患者)の獄死が非常に増えています。
東京都八王子にある八王子医療刑務所は、入院患者数が140名程度(2016年1月時点)。身体疾患100、精神疾患40といった割合です。これに対し、看護師数は69名・医師が11名。医師は定員の半数にも至っていません。理由は刑務所での仕事を嫌がる医師の家族などが多いこと、待遇の低さが挙げられます。
刑務所での仕事とは
一般刑務所の場合は、医務室(医務課診療所)勤務ですが医療刑務所や医療重点施設である刑務所の場合は「介護」受刑者を扱うことになります。
食事の介助、ケガの対処、体調不良などへの対処が多いのですが、中には精神疾患で自傷行為を働いたりする受刑者もいることから、様々なケアを行うことになります。
施設では、レントゲン・エコー・血球計算機・心電図・内視鏡、場所によってはX線装置、X線フィルム現像機、上腹部内視鏡(経鼻)、ファイバー洗浄機、眼圧測定器、血球測定器(CRP含む)、産婦人科内診台等が設置されています。
健康診断では、疾患が見つかることもあります。例えば、刑期の短い受刑者が入獄して健康診断で胃潰瘍が見つかる…といったケースもあります。医療費が支払えないので強盗して入獄した…と受刑者もいるわけです。看護師は様々な背景を持つ受刑者とは直接話すことは禁じられており、全て立ち合いの刑務官を通して話します。
刑務官同様、看護師も法務技師という国家公務員ですので、土日祝日は休み・日勤のみが基本です。ただ、医療刑務所の場合は夜勤もあるようです。
男性・女性どちらの求人があるのか
男性看護師と女性看護師ですが、どの刑務所でも男女看護師が共に働くことが普通です。体力が必要な患者が多い場合は男性、女性刑務所の場合は女性看護師専従の働き場所となります。
基本的には欠員が出なければ求人がなく、一般的に公開される求人はありません。また、給与ですが基本給が30万円程度、年収で平均400万円~450万円程度とみられています。夜勤がないことを考えると安定している…と考えることが出来るでしょう。
比較的若い受刑者が多い場合は「学校の保健室」のような職場となり、一つの医務課診療所の看護師は5人から6人程度。ですが、受刑者の増加や刑務所の増設で今後求人が増える可能性もあります。
受刑者がすべて刑務所内で医療処置されるわけではない
日本では、犯罪者の増加や高年齢化で刑務所定員を上回る受刑者が刑務所に投獄されています。そのため、医療処置が必要な患者の執刀を民間病院にゆだねることもあります。
その場合も刑務官が数名必ず24時間その病院で立ち会います。このように、医師も看護師も刑務所内では身の安全が守られています。リハビリや点滴・透析などを常時行わなければならない受刑者についても、ケアを行う間会話はありませんが、淡々と処置ができるという形になります。
無口な人、おしゃべりをしない人が適職
刑務所での仕事は「患者」とのコミュニケーションを取らないことが前提です。話好きだったり、世話好きな方はこの仕事には向いていません。また、他の看護師と立ち話をすることも厳禁です。
過去、受刑者が出所したあとに担当だった医師や看護師に「お礼参り」と称して事件を起こしたことがあります。これらは医師や看護師が漏らした「受刑者の様子」であったり立ち話がきっかけ…と言われています。刑務所看護師とは医療処置だけを黙々と行う仕事というわけです。
相手は受刑者であっても、病人であれば処置をする…それを全うできるかどうかが大事。国家公務員看護師だから、日勤だけだから、ボーナスも多いから…ということで安易に求人を探さないことは言うまでもありません。
尚、刑務所看護師に興味がある方は、大手の看護師転職サイトに登録して担当コンサルタントに相談してみましょう。その「筋」の情報はこうしたコンサルタントでしか得られないもの。実際にどんな看護師なら働いて充実できるのか尋ねるのが良いでしょう。